経済効果

カジノの経済効果はどれくらいと予想されるか?

カジノの経済効果を考える場合、重要になってくるのが2017年に大和総研が作ったリポートです。

シンガポールのIRを参考に、北海道、横浜、大阪の三ヶ所にカジノを中心としたリゾート施設などを作った場合の試算が出ています。

まず、建設費が約5兆円、運営では毎年約2兆円の生産誘発効果があると見込まれています。

また、建設による雇用などの創出により働く人の所得が増え、間接的に1兆1400億円の付加価値誘発効果が期待されるのも特徴です。付加価値誘発額だけでも日本の名目GDPの0.2%に相当するからです。

人口減と経済規模の縮小が進む中、それだけの経済効果が見込めるという試算があったため、IR関連の法案が通ったともいえます。

しかし、それだけの経済効果が見込めるのにもかかわらず、いまだにIR事業の建設などが進んでいません。

これは試算通りに数字が動く保証はないこと、また、大和総研のリポートではIRの負の側面に触れられていないという指摘があるからです。

例えば、ギャンブル依存者が増えれば、治療のための保険料負担が発生する恐れがあります。

また、生活保護者が増える、他の産業の消費が落ち込むと言ったケースも考えられます。

IR施設ができれば別の観光地の観光客が減り、IRに集中するという懸念もあるため、マイナスの経済効果も発生する恐れがあるのです。

カジノの経済効果はプラスの面を取り上げるのか、マイナスの面を取り上げるのか、どちらもいれてバランスをとるかでも違いが生じます。

また、海外の成功事例・失敗事例のどの程度の割合で取り入れて試算をするのかでデータは大きく変わります。

日本は島国であり、海外からは船や航空機で来るしかなく、海外からの集客が見込めない場合は日本の中のお金を使う場所が変わるだけで、消費の活性化などに繋がらない可能性もあるのです。

誘致に積極的な自治体、消極的な自治体が存在するのはどの側面を見るかに経済効果が大きく異なることと、産業の空洞化を招くのではないかという懸念があるためでもあります。

治安の悪化などを不安視する地域住民の声も存在するため、結果的に情報の精査や様々な調整に時間がかかり、税金などが使われ続けているという見方もできます。

他にも懸念点があり、その一つが建築資材の価格高騰です。

ウクライナ危機以降、世界中で燃料価格があがり、円安が進み、輸入資材や輸入コストの増大を招いています。

日本は石油資源を海外に頼っているため、大きな痛手を被っている状態です。

この状況が続けば建設費の増大は避けられず、経済効果の試算にも大きな影響を及ぼすことになります。

資材が不足すればIR設備建設以外の建設市場に大きな影響を与えることも考えられます。資材の価格がますます高騰し、建設関連の事業者にマイナスの影響が及びかねないのです。

この場合、カジノの経済効果とGDPを押し下げる要因の両方が発生しかねず、どの部分のデータを切り出すかで大きく経済効果の印象が変わることになります。世界経済や日本を取り巻く環境があまりにも大きく変わってしまったため、過去のデータを鵜呑みにするのは危険な状態になっています。

過去のデータのみを見るのは問題はありません。

しかし、現状に即したデータが欲しい場合は建築資材の価格高騰などを前提に計算をやり直す必要があり、その範囲もかなり広くなってしまうのです。

計算をやり直している間に、社会情勢が大きく変わる可能性もあり、先行きの見通しがつけづらい、正確な計算をするのが難しい状況になっていることに注意が必要です。

別な見方をすれば、過去データだけをみて、成功例・失敗例だけでなく、コロナ禍でどの程度の打撃を受けたかをチェックする方法もあります。

都市のロックダウンを行うなど、日本より厳しい外出禁止措置をとった国は珍しくなく、観光にも大きな影響を与えました。

外国人を主要な顧客としていたカジノは大きな打撃をこうむった可能性が高く、実際に起こった事例・今後あり得るリスクと捉えることも可能です。

日本のカジノ経済効果はまだ机上で議論されている状態であり、明確な経済効果が出ているとは言えません。

今後IRが本格的に進んだ場合に備え、海外の事例から学んでいくのも方法です。

ギャンブル依存による失業率などを調べることも可能なため、マイナスの経済効果を調べた上で、コントロールできる範囲なのか考察する方法もあります。

ギャンブル依存者を支援する、自立を促す団体なども存在するのもポイントです。

国内の経済効果の試算だけでなく、明確に結果が出ている海外のデータを調べるのは基本と言えます。

カジノの歴史が長い地域について調べれば、好景気の時、不景気の時などのデータも取れます。

カジノの経済効果は非常に広範囲に及ぶため、いかに多くのデータや視点を確保し、どのように提示していくかも重要です。ただ知るだけ、見るだけでなければ、データの深掘りや、試算された状況などもセットでチェックする必要があります。

-経済効果
-, ,

© 2024 経済効果 Powered by AFFINGER5