民法とその改定について
1.民法について
民法とはどういったものだろうか。民法は憲法に比べると条文の数だけで10倍以上あり、法律関係になじみがない人は民法自体に馴染みがなくイメージを持ちにくいだろう。民法とはざっくりというと市民社会のルールのことである。日本国憲法が作られたとき、もっと国民の自由を大事にしようという発想が生まれた。それに伴って市民は法律上、誰かに強制されたり、批判されることもなく自分の意思で経済活動をすることが可能となった。自分の意思で自由に買ったり売ったり、貸したり借りたりということが可能になったのである。しかしこのように市民が自由に経済活動をしていくと必ずトラブルが発生する。これを解決するための法律が民法である。民法には大きく2つのグループに分かれている。財産法と家族法である。ただこれらは財産法という法律があったり家族法という法律があったりするわけではなく、民法の中の分野を分けてこう呼んでいるという点に注意が必要だ。財産法は所得や売買、賃貸借などの財産関係を規制するもので、家族法は夫婦や親子、兄弟姉妹などの身分関係や相続関係を規律するものである。民法は第1編総則、第2編物権、第3編債権、第4編親族、第5編相続という5つのパートから成り立っている。その4編と5編を合わせて家族法と呼ぶ。
2.民法の改定について
時代の流れを受けて、民法は改正されていった。平成25年に法務省から「平成25年12月5日、民法の一部を改正する法律が成立し、嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同等になりました(同月11日公布・施行)」という発表があった。これがどういった内容かというと、従来は嫡出子と非嫡出子の相続分が2:1とされていた。ここでの嫡出子とは法律上の婚姻関係にある男女間の子供、非嫡出子とはそうでない男女間の子供のことを言う。従来は法律婚を維持・尊重するという視点から嫡出子と非嫡出子の相続分が異なるのは仕方ないと考えられていた。しかし、婚姻に対する価値観の多様化、さらには親が法律婚を選ばなかったからといって子供が不利益を受けるのは不合理であることなどから、この規定は違憲だと判断されるに至った。そして平成25年にこのように民法が改訂された。このように民法が改訂される背景には「価値観の多様化」ということが必ずといってもいいほどあげられる。国民にとって法とはもっとも基本的で守るべきルールである。しかし法がどれだけ大切なものであっても、時代により、社会により、ふさわしい法の姿は変わっていくということは容易に想像することができるであろう。そこで「民法は衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる」と示されている。さて、それでは法はどんどん改訂されたほうがいいのであろうか。筆者は必ずしもそうではないと考えている。法は前に述べた通り国を作る際に採用されたもっとも基本的な価値観である。そのような基本的な価値観は時代を超えてもある程度一貫されたほうがいいのではないだろうか。一時の多数派により左右されるということは安定した国家を作るためにはマイナスであるといえるし、何よりナチズムのような極端な思想が台頭する危険性を防ぐことができない。こういった考えから多くの国では簡単に法の改定できない硬性憲法という制度を取っているのである。近年、憲法や法において改訂を求める声が大きくなりつつある。日本をよりよい国にしていこうというのはとても素晴らしいことではある。しかし今、法を改定することによって何が起こるのか、自分が求めること以外に予期していなかったような事態になる可能性はないのか今一度検討して、慎重に意見していくべきなのではないだろうか。参考文献
『今こそ変えよう!家族法―婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える』日本弁護士連合会
(日本加除出版)
「法務省 民法の一部が改正されました」
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00143.html
2016年8月27 日参照
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