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東日本大震災からの復興において行政と金融市場が果たす役割

1.東日本大震災に見る災害後の課題

東日本大震災の震災からの復興をどのように遂げていくべきか、今の日本は今もなおこの問題に直面し続けている。
それらの問題にいかに対処していくべきなのか。ここでは資金を調達する方法を導いてくれる金融・資本市場が、日本の経済の成長・復活に果たすであろう役割について考えていきたい。
金融・資本市場の活用という観点から再興プロセスを考えると、大きく二つの段階に分けられよう。それは「復旧段階」と「復興段階」である。
最初の「復旧段階」は、仮設住宅の建設や、倒壊した家屋のがれき撤去など、壊れてしまった被災地域のライフラインの機能を回復するステップである。これらは被災者の生命、日常の暮らしに直結する問題であるため、一刻も早く実施・解決されなくてはならない。それゆえ、この段階では政府が早急に主導的な役割を果たすべき「行政の問題」であり、復旧事業の費用も、政府が負担するべきであると考えられる。そして政府が復旧の為に必要な十分な資金を、できるだけ円滑に調達するためには、財政悪化に対する市場の懸念を解消する工夫や、投資家に対する購入インセンティブの提供などが不可欠でもある。
ライフライン復旧の見通しがついてくると、再興プロセスは次の段階、「復興段階」に移る。この段階では、被災地域の住民が普段の日常生活を、また地元企業も生産・営業活動を、それぞれ本格的に再開できるよう、街並みを復興させていくこととなる。この段階に入ると、上下水道施設の再整備や港湾補修など、キャッシュフローが生まれるインフラ事業も出てくるため、「復旧段階」とは違って民間の参入余地が生まれる。つまりここでは政府と民間が協力することが重要なのである。具体的には、「改正PFI法案の成立を前提に、それに基づくインフラ復興事業へのPFIの積極導入と、PFI事業者に民間からの資金を政府からの支援と組み合わせて提供するインフラファンドの組成」が方策の一つである。

2.復興と金融市場の役割

今回の大震災では震災前から懸念されていた、少子高齢化やアジアなど新興国の台頭、深刻な財政難といった状況の中で被災地の、そして日本経済の復旧・復興を行わなければならないという非常に困難な状況をもたらした。がその一方で3万人近くに達した大規模災害にもかかわらず、被災地域はパニック的な混乱に陥いることなく、地域住民は比較的冷静に秩序立った行動をとることができたという日本の高い精神力・連帯感といった素晴らしさも世界に見せつけた。日本は震災から再興する力を十分に兼ね備えている。そしてその為の資金の確保の手段として金融資本市場からの視点は非常に大きな役割を占めてくる。日本がこの再興を乗り越えた時、日本の経済はよりいっそう強靭になっているに違いない。
今後の日本の金融資本市場に与えられた課題は、少様々な社会問題や、震災による災害の中でいかにしてインフラを整え資金を最適に配分するか、運用するか。さらには世界のグローバル化が進む中で、日本の金融を世界レベルで通用する「金融産業」として確立することを期待したい。

参考文献一覧

野田 由美子『PFIの知識』(日本経済新聞社)
東洋大学PPP研究センター『公共インフラ再生戦略 PPP/PFI徹底ガイド 2016年版』(日本経済新聞出版社)
「金融資本市場および金融産業の活性化等のためのアクションプラン ?新成長戦略の実現に向けて?」http://www.fsa.go.jp/news/22/sonota/20101224-5/01.pdf 2016/07/18参照
「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ 中間論点整理(第一次)http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20070613/01.pdf 2016/07/18参照

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